2017/3/12 名古屋ウィメンズマラソン
キルワが女子単独レース国内最高の2時間21分17秒で3連覇
安藤が2時間21分36秒の日本歴代4位、初マラソン日本最高


安藤友香のレース後会見一問一答(前半)
「30kmで構えてしまうのでなく、ひたすら前を見て走れたので、きついところを乗りこえられた」

Q.今の感想は?
安藤 キルワさんと一緒に走れるのはなかなかないことなので、後先のことは考えず、一生懸命について行きました。その結果、2時間21分台で走ることができ、すごく嬉しいです。

Q.レース前から30km過ぎをポイントに挙げていましたが、そこから差を広げられず、粘ることができた要因は?
安藤 最初、後ろを走っていたら、指で隣に来い、と指示をしてもらったんです。私をライバルとして見てくれているんだと思ったら嬉しくなり、この人ととことん走ってやる、と思いました。30kmで構えてしまうのでなく、ひたすら前を見て走れたので、きついところを乗りこえられたのだと思います。

Q.右手に里内正幸コーチから文字を書いてもらい、左手にご自分で文字を書き込んでいました。
里内コーチ 安藤はもう、トレーニング中の走力では戦えるレベルに来ていました。あとはもう、精神的に強気に行って、粘って最後まであきらめなければ結果は出ると思って“絶対にあきらめるな”と書きました。

Q.(増田明美さん)しかし、最後まで手袋を取りませんでした。それと、リストバンドをつけて走る選手は珍しいと思うのですが、その2つの理由は?
安藤 一番信頼している里内コーチにコメントを書いてもらい、それを自分の糧として走ろうと思っていました。きつくなったら見ようと思っていましたが、手袋はしていても、力をもらっていることは感じられました。この右手には、絶対にあきらめないパワーがある。取らなくても力になりました。リストバンドは入社して最初の誕生日に里内コーチからプレゼントしていただいたものです。初めてのハーフマラソンのとき、私の好きな香水をつけ、途中でにおいをかいで走ったら良いレースができました。大事なレースではゲン担ぎで付けるようにしています。

Q.(増田さん。質問不詳)
里内コーチ 贔屓はできないので、平等に。

Q.ご自身の特徴と、強みはどこだと思っていますか。
安藤 一番は皆さんによく言われる、腕をだらんと下げた走りです。色々な人から走りにくくないの? と聞かれますが、私の中ではしっくり来ています。そこは自分の走りを貫けばいいのかな、と思っています。強みはあきらめずに最後まで粘ることです。そうしたら勝機も生まれると思っています。

Q.33kmの上りに入る少し前に離されてしまいました。そこはどんな状況でしたか。
安藤 坂を上りきるところまでつきたかったのですが、力不足で離されてしまいました。練習でも上りが得意としていましたし、コースを試走したときも里内コーチから「オマエは上りが強いから追いつけるイメージで走れ」と言われていました。それを思い出して、上りでキツイ場所でもここで追いつける、とプラス思考で走っていました。

Q.弱気になった場面は?
安藤 15〜20kmの間に苦しいところが出てきて、大丈夫かな、と不安になりました。後半はもう、どうでもいいわ、と思って行きました。

Q.フィニッシュした瞬間はどんなことを考えましたか。
安藤 ここまでお世話になった里内コーチの顔、杉山コーチの顔、家族の顔を思い浮かべました。ここで頑張ることで、お世話になった人に感謝の気持ちを表せる。お世話になった方たちに何かを伝えられたら、と思いました。

安藤友香のレース後会見一問一答(後半)
「どうしたら上半身を上手く下半身と連動させられるか、全身を使うことができるかを試行錯誤していくなかで今のフォームになってきました」
Q.今のフォームにした経緯は?
安藤 スズキ浜松ACに入って練習していくなかで、上半身の使い方がよくないと里内コーチから指摘され、どうしたら上半身を上手く下半身と連動させられるか、全身を使うことができるかを試行錯誤していくなかで今のフォームになってきました。こうしようと(具体的な動きが)あったわけではなく、私の走りは上半身が力んでしまうと進まないので、力を抜くことからスタートしました。力まずに走ることを一番に考えて、今のフォームになりました。(参考にした選手は)ありません。我流です。

Q.ロンドン世界陸上への意気込みは?
安藤 今日も後半でキルワさんに引き離されてしまいましたし、タイム的にももっともっと上げていかないと戦えません。今回の結果を受け止め、また一から積み上げて行き、ロンドン世界陸上で勝負していけるようにしたい。

Q.スズキ浜松ACに入って、人間的にも視野が広がった点があったと聞きました?
安藤 移籍を2回経験して、私の中では自分は被害者だ、自分が一番かわいそうだ、という気持ちがありました。でも、そうじゃないんだよ、自分にも問題があったから移籍という形になったんだよ、と里内コーチから言われました。走れないことも誰かのせいにして逃げてきた。最初は納得できない部分もあり、それを何度も繰り返して言って、そのたびに何度も怒ってくれた。何度も怒るのって、いやだと思うんです。それでも親身になって接してくれました。里内コーチに出会っていなければ、今の私はないと思います。すごく感謝しています。
里内コーチ 私も選手時代に移籍を経験しました。安藤がスズキ浜松ACに来るときに、移籍は選手のわがままという部分も絶対にある、と言って聞かせたんです。本当に素直な子で、その素直さをしっかり伸ばしたいと思いました。そういったところが走りのブレーキになっていた部分もあると思ったので、それを外せばこの子の力はもっと出ると思いました。

「ここまで練習をやってこられたことが一番大きくて、やることはやってきたからあとはなるようになるしかない」
Q.初マラソン日本最高のペースとわかって走っていましたか。歴代記録は4位で、上にはビッグ3の野口みずき選手、渋井陽子選手、高橋尚子選手しかいません。
安藤 初マラソン日本最高は意識していませんでした。2時間22分半を切りたいとは思っていましたが、欲を出すと走れなくなってしまいます。キルワさんにしっかりついて行くことだけを考えて走っていました。歴代記録で上の方々は、もっともっと自分に厳しくされていたと思います。私がそういうところに入っていいのか、という気持ちです。歴代4位ですがそれでおごらず、自分に厳しくもっと精進して、やっていくためのステップにしたい。

Q.実業団駅伝をしないチームで、マラソンに専念できていることの影響は?
安藤 マラソンを主としてやっていきたいと思ってスズキ浜松ACに入りましたし、駅伝も全国都道府県対抗女子駅伝や、東日本女子駅伝には出られますから、駅伝でリフレッシュしています。自分としては、良い環境でやることができていると感じています。

Q.チームメイトで同学年の清田選手の存在は、どういった存在ですか?
安藤 清田の存在は大きいですね。一番はすでにマラソンを経験していて、昨年のこの大会で4位(日本人3位)に入って、タイムもすごく良かったこと。去年は応援するだけでしたが、とにかくスゴイと感じました。その選手が身近にいて、一緒に練習できれば2時間24分台では絶対に走れます。今回も清田と練習できたことが大きかった。

Q.初マラソンで不安はなかったのでしょうか。こういった練習が今日に生きた、というものがありますか。
安藤 緊張と不安でどうなるのかな、と思ったこともありましたが、ここまで練習をやってこられたことが一番大きくて、やることはやってきたからあとはなるようになるしかない、と思うことができました。不安もありましたが、その中でも楽しんでやろうと考えられた。一番自信がついたのは、11月の宮崎合宿中の30kmの変化走です。5km毎に区切って、2kmをゆっくりめに走って、3kmを一気にペースを上げます。苦しい場面もあって、逃げ出して走れないようなケースですが、里内コーチに声をかけていただいて、私の中で奮起するものがありました。


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